大阪地名研究所

合併をめぐる市町村名や駅名、区名など、地名に関する話です。

日本地名研究所 会員(2018年より)
関心分野ー 市町村名(合併にともなう変遷、行政地名) 、消滅地名、駅名、ネーミング、韓国の地名など
関連論文ー 筑波研究学園都市の合併問題と新市名の選定過程(1987年)

祭りでよみがえる地名

巽神社の祭り。
すでに巽地区の住所の地名は巽東、巽中など、巽+方角の地名しかない。
ところが祭りになると、旧巽村の字名があらわれる。
四条
西足代
大地
伊賀ケ
矢柄
新しく住んだものにはまったく馴染みはない。
橋の名前などで見かける程度である。
でも地元の祭りとなると、むくむくと現れる。
いずれも個性的な地名で、さらに気になる。
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道修町(どしょうまち)@大阪

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道修町は、大阪では薬の町と知られる町の地名。
由来は人名説、寺名説とあるが、わからないらしい。
江戸時代からある地名でもある。
名前からは儒教らしい影響を感じられる。
「どうしゅう」でなく「どしょう」という読み方が気になる。





鰻谷中橋筋(うなぎたになかばしすじ)@大阪

鰻谷は大阪の地名。江戸時代からある。
鰻谷とは町名からは消えてしまったが、通りや商店街の名前として残る。
長堀通りの1本南側にあたり、長堀通りとほぼ平行に東西に走っている。

地名の由来としては、字の通り、鰻がたくさんとれた谷なのか、あるいは鰻のように長い谷だったのか。あるいは鰻の寝床のような細い谷だったからか。
一番考えられるのは地形による地名だが、現在も残っているかもしれない地形が気になる。また落語でも有名な地名。
公的な町名から消えながら、あちこちに地名として残っているのは、この地名に対する愛着が感じられる。

また中橋は、長堀川にかかる橋の1つ。中橋筋はその橋を通る南北の通り。つまり東西に走る鰻谷通りとは垂直で交差する。中橋は消えてしまったが、地名として残っている。

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篠山市か、丹波篠山市か

篠山市か、丹波篠山市か 。
ニュースによれば、ある個人が篠山市から丹波篠山市への改称を条件に、改称した場合にかかる費用を上回る金額が寄付したという。
地名の問題で、金銭面が話題になるというのも珍しい。
篠山市は旧多紀郡の4町(旧篠山町・今田町・丹南町・西紀町)が合併して誕生した市である。
合併にあたり、新しい市名は中心にある町、篠山が採用された。
この規模で新市名に中心地名が採用されることは珍しい。
これには合併の範囲がすべて篠山藩に属し、篠山城など「篠山」には歴史的な中心性が高かったことがある。
また兵庫県篠山庁舎や篠山簡易裁判所、篠山警察署、地方法務局篠山支局、篠山区検察庁など、地域を代表する公共機関が篠山に「篠山」の名称で設置されていたということも関係している。
ただそのまま多紀郡の4町が合併したのであるから、名称は多紀市でも問題なかったように思われる。
しかし実際には郡名よりも知名度のある中心地の名称を採用された。

篠山市か、丹波篠山市か。
今回改称については、以下の問題があると考えられる。
まず、同じ兵庫県に丹波を名乗る行政自治体がすでに存在している。
丹波市である。
丹波市は旧 - 氷上郡の6町(柏原町・氷上町・青垣町・春日町・山南町・市島町)が合併した。
こちらも郡名を採用して氷上市でも名称に問題がなかった。
しかし実際には郡名よりも知名度のある旧国名の丹波が採用された。
また合併する町に氷上町がすでにあり、そのまま氷上市となると吸収合併のイメージを与えることを避けたことも理由の1つと考えられる。
この「被合併の行政名」を避ける傾向は、よくある。
丹波市の誕生で、丹波といえば丹波市が代表するようなイメージになった。
たしかに、すべての範囲が丹波に属してたから、間違いではない。
でも実際の「丹波」の範囲は、京都府と兵庫県、また大阪府にもまたがっている。
また京都府にも丹波を名乗る市と町がある。
南丹市と京丹波町である。
もし篠山市が丹波篠山市となると4つもの市町が丹波を名乗ることとなる。
ちなみに篠山という名前がつく地方行政団体は他になく、有名な地名も存在しない。
篠山だけでも全国的に通用するとも考えられる。
ちなみに全国で国名がついた市は意外と多い。
いずれもこれらは、すでに同名の地方自治体があるため、区分するために旧国名が名称に加えられたものである。
区分の必要のない篠山市が、丹波篠山市と名乗る必要があるのだろうか。
それでも、丹波篠山にはある程度、改称しても良い理由もある。
まず「丹波篠山」という名称が、以前から使用され、通用していること。
すでに篠山市の観光協会は丹波篠山観光協会と名乗っている。
また市内に丹波焼など丹波の名前のつく特産品があること。
また篠山には自らが丹波を代表しているというプライドがある。
改称となれば問題になるのが費用。

その費用の問題が、献金で解決されるかもしれない。
このまま改称に踏み出すかどうか。
一番の問題は兵庫県丹波市と兵庫県丹波篠山市が隣接して存在することになること。
こちらは混乱を招くかもしれない。
また丹波市サイドからの反発も予想される。
個人的には「多紀郡」の名称が消えてしまっていることが気になる。
旧多紀町の名称として残っているが、かつての郡名も大切にしてほしい。
郡名も地域を代表する歴史的な名称であったのだから。

天五に平五 十兵衛横町

現在の北浜あたりにあった地名。
開平小学校の脇に碑が立っている。
由来は人名。
天五と平五とは江戸時代の両替商、天満屋五兵衛と平野屋五兵衛のこと。
二人の五兵衛の店が道を挟んであったことから、五兵衛と五兵衛を足して十兵衛横町と呼ばれたという。
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大津線の駅名変更

2018年3月、京阪電車大津線の駅名が4つ、改称された。 浜大津ー>びわ湖浜大津 別所ー>大津市役所前 皇子山ー>京阪大津京 坂本ー>坂本比叡山口 上の4つの改称には、2つのパターンがある。

1.前または後ろに地名を加え、もとの駅名を残す

2.完全に別の駅名に変更する

たとえば浜大津、坂本駅の改称が1のパターン。 皇子山と別所が2のパターンにあたる。 まず1の傾向について見てみよう。 浜大津+琵琶湖 =びわ湖浜大津、坂本+比叡山=坂本比叡山口はそれぞれ、従来の駅名に観光地を加えたもので、観光地としてアピールしたい意図は感じられる。 ただびわ湖浜大津駅の琵琶湖、は範囲が広い。はっきり言えば、大津線ほとんど琵琶湖の脇を走っている。 浜が琵琶湖の浜を指すとしてでもある 。 また気になるのはその表記である。なぜ琵琶湖ではなくびわ湖なのか。

そこでびわ湖の使用例を見てみよう。 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 、びわ湖バレイ、びわ湖テラス 、びわ湖大津観光協会 、びわ湖大津プリンスホテル(滋賀) 、ホテルピアザびわ湖 、びわ湖大津館 観光関係の施設で、びわ湖の表記が目立つ。 ただ字の難しさでいえば、比叡山も簡単とは言えない。 読みやすい、読みにくい、そのような理由でせっかくある漢字表記を捨て、簡単に駅名にひらがなを採用していいものだろうか。また、ひらがな2文字、漢字4文字なども、バランスの悪さを感じさせる。 皇子山から京阪大津京駅へ改称は、JR大津京駅を意識したもの。こちらも京の文字が2つ入るせいか、とてもバランスが悪い。またJR大津京駅は湖西線の大津の玄関駅であるが、京阪大津京駅は玄関駅ではない。京阪大津線の玄関駅は浜大津駅である。浜大津駅と大津京駅が同じ線に存在する。混乱が増えるばかりではないだろうか。 そして別所から大津市役所前の駅への改称。役所の名前は強い。移動しないイメージもあるし、至便性もある。ただそのために、別所という駅名をあっさり捨ててもよかったのだろうか。こちらこそ併記ができなかったのだろうか。

大阪市の新しい区名?

大阪市が都構想を発表し、大阪都が実現した場合、現在の大阪市のエリアに設置される特別区について、新しい区名を公表した。

構想によると、大阪市のエリアに設置される特別区の数は4つで、現在の24区が4つに合併される。 その区の詳細を見てみる。 北区(北、都島、福島、旭、城東、鶴見、東成) 中央区(中央、西、浪速、大正、西成、住之江、住吉) 南区(生野、天王寺、阿倍野、平野、東住吉) 東西区(東淀川、淀川、西淀川、此花、港) この「東西区」が特に批判が高まっているとの報道があった。

http://www.yomiuri.co.jp/national/20180407-OYT1T50032.html

この批判には私にも納得できる。 方角を示す区名として、これほど不適切なものはない。 だいたい東か西かわからないし、日本にある地方自治体の名称で今までこのような区名は例がない。 しいて言えば、方角が並ぶ地方自治体といえば西東京市ぐらいしか思い浮かばない 。 東西区以外にも気になる点がある。都構想によれば住之江が中央区、東住吉が南区となっている。 住之江が中央にあると思い浮かべる住民が大阪にどれほどいるだろうか。 同じことは東成が北区であることにもいえる。 東成区の東には東大阪市がある。 また、同じく東大阪市と接する生野区は、南区である。そして いまミナミと通称呼ばれるエリアは南区ではない。 南区にないミナミ、ミナミのに南区は市民にわかりやすいだろうか。

都構想の区名が地名を採用せず、方角の名称にこだわったのは、大阪都の下になるためと思われる。 方角が採用された場合、たとえば大阪都北区となり、現在とほぼかわらない印象がある。 そのために東西区のような、意味がわからない区名が案としてあがることになったと思われる。 この方角は大阪城を基準にしているとの話もあるが、それでもおかしい。 梅田は大阪城の西にあるが、北区ではないか。 批判を受け、東西区ではなく方角ではない淀川区にする案もあるようである。 その場合、ほかの区は納得するだろうか。たとえば 住吉が地名として消えてしまうことに、抵抗はないだろうか。ターミナル名である天王寺も、このままでは地名として消えてしまって良いのだろうか。また天王寺が南区にあることも納得してもらえるだろうか。 また大正、此花、生野のような区名でしかほとんど見ない地名も消えてもいいのだろうか。 また東成、西成といった昔から大阪にあった郡名も消えてもいいのだろうか。

そもそもこの4つにわける区割りに問題はないだろうか。 港区と東淀川区が1つになっているが、区役所が1つでも移動など問題ないのだろうか。 また東成区と福島区が同じ区として、1つの意識を持てるのだろうか。 大阪市としてならわかる。問題は北区としてである。規模にこだわりすぎて、おかしな区割りになっていないだろうか。 そもそも24区のままで問題があるのだろうか。 東京都にも23の区があるが、多すぎて合併という話はきかない。 また東京都には昼間人口が5万人を下回る区も存在する。 大阪の場合、人口が最小の区である大正区でも64355人。 大阪には大正区よりも人口が少ない地方自治体もある。 これらの問題は、いずれも都構想自身がなくなれば問題はない。ただ都構想が進む前に、まず区の合併を進める意図も感じられる。特別区となる前に合併しないと、合併が困難だからだろう。それでも250万人の大阪市が4つの区でうまくいくとは思えない。

江戸時代、大阪の橋番付

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江戸時代の大阪の橋番付。
大関は天神橋と難波橋。いずれも大川にかかる橋。
関脇は日本橋に高麗橋。
日本橋は道頓堀川にかかる、いまでも有名な橋。
高麗橋は西横堀川にかかる。観光地ではないけれど、住所表記でも残っている。
小結は本町橋と長堀橋。
こちらはどちらも消えている。

宗是町(そうぜ)@大阪

現在の中之島三丁目にあった地名。
宗是は江戸時代の豪商(早川宗是)の名に由来するらしい。
淀屋橋、道頓堀など阪には意外と人名に由来する地名がある。
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生國魂神社(いくたま)@大阪

生國魂神社。
いくたま。
神社を関西ではさん付けで呼ぶ。
いくたまさん
漢字3文字で4つのひらがな。

生 い
國 く
魂 たま

漢字では生魂だけでも良さそうなのに、あいだに國という文字が入っているのが不思議である。
そこには生きる魂ではなく、生きる國の魂としたいという意図が感じられる。
ちなみに所在地の地名は「生玉」。
本来はこちらの表記であったかもしれない。
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