大阪地名研究所

合併をめぐる市町村名や駅名、区名など、地名に関する話です。

日本地名研究所 会員(2018年より)
関心分野ー 市町村名(合併にともなう変遷、行政地名) 、消滅地名、駅名、ネーミング、韓国の地名など
関連論文ー 筑波研究学園都市の合併問題と新市名の選定過程(1987年)

韓国の地名研究

安甘橋/アンカムギョ/안감교

城北川に架かる橋の名前。
安 は近くの地名から安岩洞から一字を取ったと思われる。
ところが 甘 が分からない。現在、近くに甘の字を含む地名が存在しない。
橋の名前の由来を調べると、以前は「安岩橋」であったが、1997年に現在の名前に改称したとある。
なおさら「甘」の意味がわからない。

ただ以前、ソウル歴史博物館でソウルの地図を見ていたら、このあたりに安甘の地名を見かけた。
そこには安甘川の地名があった。
もしかしたら安甘とは城北川の旧名かもしれない。
さらに「甘」の由来が気になるが。。。

韓国の新しい市名〜京畿道城南市、河南市、広州市合併の新市名

京畿道城南市、河南市、広州市が合併することになった。合併すると必要になるのが合併後にできる新しい地方自治体の名称である。

今回の市名選定にあたっては、2010年の2月2日から8日まで、合併する3市では新市名の公募が行われた。
対象は3つの市に住所を持つ市民、団体と3つの市に本籍を持つ人で、1人2つまで応募することができ、ホームページ、ファックス、郵便、訪問などの手段で可能であった。
また最優秀作品には500万ウォン、優秀作品に300万ウォンという賞金もつけられた。

この公募では 1,232件の公募があり、314件の名称が集まったという。

このとき、上位にあがったのは、以下の市名であった。

ハンソン市 ???
クァンナム市 ???
ハンサン市 ???
クァンジュ市 ???
サンソン市 ???

そして2月8日に発足した統合準備委員会2月18日、新しい市の最終候補5つを決定した。

クァンナム市 ???
クァンジュ市 ???
ハンサン市 ???
ハンソン市 ???
ハンジュ市 ???

なかでも一番多かったのはハンソン市であった。

それでは候補となった新市名について、1つ1つ見てみることにする。

クァンナムは漢字で書けば広南。つまりはそれぞれの市の一字をあわせた合成地名である。ただ、もともとこの地域は広州郡の一部であった。したがって広州郡の南という意味とすることもできる。またソウル市南部の地名、カンナムも連想させる。ただカンナムとクァンナムが隣接すると、間違いは多くなると思われる。

クァンジュは漢字で書くと広州。この地域の郡名にあたる。ただ、合併元の行政体に同じ地名である。日本の市町村合併では、その地名がふさわしくても、避けられるケースが多い。また、まったく同じ読みのクァンジュが韓国南部にある。人口規模も同じになるので、間違いが多くなると思われる。

ハンサンは漢字で書くと漢山。ソウルの古名にあたる。確かに現在は使われていない。この地域に南漢山城(ナムハンサンソン)があり、駅名にもなっている。この一部をとったものとも考えられる。

ハンソンは漢字で書くと漢城。ソウルの李朝時代の、漢字名にあたる。最近まで中国語の表記として使われていたが、別の名称「首爾」に改められた。ここにきて復活である。このハンソンは最近まで実際に使われてきたという生きた実績がある。ただ厳密に言うと、この地域はソウルではない。川越や船橋あたりが江戸と名乗るようなイメージとなる。また、近くを流れる漢江(ハンガン)で漢(ハン)という字が使われ、ハンは広いという意味もあり、韓国のハンにもつながる。いいイメージがあるようである。

ハンジュは漢字で書くと漢州。これも上の漢城または漢山と広州の合成地名。

サンソンは漢字で書くと山城。先程も触れた南漢山城の一部から由来するらしい。


ちなみに公募の際、市名の条件とされたのは
○歴史性:地域の由来、神話、伝説、伝統など歴史的意味
○象徴性:相生協力と市民和合の未来志向的意味
○大衆性:親近感があり誰でも覚えやすい意味
○国際性:英語、中国語など外国語で表記または発音しやすい意味
○都市特性:世界と交流するグローバルブランド都市として跳躍とビジョンまたは市民幸福な自足都市の意味

などであった。


2月18日、統合市準備委員会は3つの市に住む19歳以上の男女3000名を対象に、5つの新市名に対する選好度調査を行れることになった。その結果は19日ソンナム市民会館で開かれる市民公聴会で発表、検討され、22日には3つの市議会の意見を求めた上で、23日に最終決定、国の行政安全部に提出することになっていた。
ところが合併自体が2010年6月の地方選挙まで保留となってしまった。2010年5月現在まだ新市名は決定していない。

http://ihanam.net//woori/board/board01/1480997_2922.html?big_temp=5(韓国語)
http://ihanam.net//woori/board/board01/1481211_2922.html?big_temp=5(韓国語)
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2010/02/18/2010021801746.html(韓国語)
http://www.chosun.com/site/data/html_dir/2010/02/08/2010020801709.html(韓国語)
http://www.seoul.co.kr/news/newsView.php?id=20100203024013(韓国語)

ソウルの固有駅名

韓国の地名は基本的には漢字で書かれる地名である。おそらくは本来の固有語に漢字をあてはめ、漢字読みに変化したものも多いと思われる。 しかし、すべて漢字化するものはむずかしかったらしい。 ソウルの駅名でも、漢字化されていない駅名がいくつかある。

最近、地下鉄の駅に、「スンウリマル(純粋にわれわれの言葉)」の駅名について由来を書いた張り紙があった。
そこにあがっていた駅名と、説明を見てみる。

エオゲ ???  地下鉄5号線
小さな峠または小さな子供と関連がある峠。

クブンタリ ???? 地下鉄5号線 
朝鮮時代、この地域の村にあった橋が折れ曲がっていて、折れ曲がった橋(クブンタリ)とと呼ばれた。

トルコジ ??? 地下鉄6号線
村の東側の山が紺色の石を突き刺したように見え、トルコジ(石差し)村と呼ばれた
トッパウィ ??? 地下鉄6号線
岩の形が瓶(トク)のようだからとつけれられた説と、岩が多くて隠れやすいのでつけられたという説がある。

マドゥル ?? 地下鉄7号線
昔ここに宿駅の基地があり、馬(マ)を野原(ドゥル)で育てたためという説がある

モッコル ?? 地下鉄7号線
朝鮮時代、墨(モク)をつくっていたムットン(墨洞)という名前を純韓国語で表記したという説と
学問を奨励するためにモク(墨)を村の名前として定めたという説がある。

チャンスンペギ ????  地下鉄7号線
チャンスン(=村の守り神として立てる男女の木像)がある場所をチャンスンペギといい、朝鮮中期、王の正祖(チョンジョ)が悲痛で死んだ父思悼世子サドセジャを忘れないためスウォンの墓所を参拝に通い、森が生い茂るこの場所で休んでいた間にひっそりとチャンスンをつくったという

ポラメ ???  地下鉄7号線
ポラメは狩りのために育てた生後1年以内のタカのことで、空軍士官学校の象徴する鳥がポラメ。
空軍士官学校だった場所を公園としてポラメ公園と命名。


上記以外にも、以下の固有語の駅がある。

トゥクソム 地下鉄2号線
タンコゲ 地下鉄4号線
ボチコゲ 地下鉄6号線
セジョル 地下鉄6号線

駅の改称−東大門運動場駅から東大門歴史文化公園駅へ

2009年10月29日、東大門運動場駅が東大門歴史文化公園駅に改称した。
すでに駅目の根拠となった東大門運動場は、昨年で撤去済みである。
そのため、駅名の変更は時間の問題と思われた。
どのような駅名に変わるのか。
個人的に想定していたのは「東大門市場」駅。
ただ、実際の市場からは少し離れているのが弱い。
または、東大門運動場のあとにできるデザインパークの名をとって「東大門デザインパーク」駅名も考えられた。
最近、カタカナの、しかも外来語の駅名への改称が多い。

九老工団駅ー>九老デジタル団地駅
加里峰駅ー>加山デジタル団地駅
水色駅ー>デジタルメディアシティ駅

また、インチョン地下鉄でも新線でカタカナ駅が誕生している。

キャンパスタウン駅
テクノパーク駅
セントラルパーク駅

それまでのカタカナ駅名とえば
南部ターミナル駅
高速ターミナル駅
ワールドカップ競技場駅
など、すでに韓国語の一部となったような外来語のみであった。

あきらかに駅名の方針が代わったように思われる。
ちなみに駅名を決めるのは、ソウル市地名委員会。
今回の東大門運動場駅も、ソウル市地名委員会により決定された。

「東大門歴史文化公園駅」
トンデムンヨクサムナコンウォン駅
동대문역사문화공원역


ひとまず、カタカナ地名の採用は見送られた。
ハングルでは一番長い駅名らしい。
ただ、名前の由来となったに東大門歴史文化公園は10月27日に誕生したばかりの公園である。知名度はほぼ0に近い。
これは、公園をアピールしたいソウル氏の意向が反映されたものと思われる。
しかし、歴史の浅い公園の名前がつくことに、正直違和感がある。
東大門といえば、興仁之門。これからは歴史性は感じられる。
しかしそれ以外のイメージといえば、やっぱり市場なのである。
残念ながら、現在、東大門ときいて「歴史」「文化」「公園」と連想する人は少ないと思われる。
今回の改称も、最近の駅名改称の流れに見られる、「イメージ先行」の流れに沿ったものではないか。

ちなみに改称はすでにされたが、駅名の看板の変更、アナウンスの変更までは、まだ時間がかかるため、実際に改称されるまでは時間がかかるらしい。

ソウル地下鉄:漢字+固有語の駅名

前回、ソウルの地下鉄の駅名で固有語名+漢字の合成駅名は2つしかない(カチ山、セッ江)と書きましたが、よく調べてみるともっとありました。 すみません。


調べてみると、以下の通り。

1号線 東廟アプ トンミョアプ ???
2号線支線 カチ山 カチサン ???
3号線 母岳ジェ ムアクジェ ???
3号線 鶴ヨウル ハクヨウル ???
4号線 漢大アプ ハンデアプ ???
4号線 弥阿ムゴリ ミアサムゴリ ?????
5号線 広ナル クァンナル ???
5号線 汝矣ナル ヨイナル ????
6号線 孝昌公園アプ ヒョチャンコンウォンウアプ ?????
7号線 トゥクソム遊園地 トゥクソムユウォンチ ?????
7号線 新大方サムゴリ シンデバンサムゴリ ??????
7号線 オリニ大公園 オリニテゴンウォン ??????
7号線 光明サゴリ 光明??? ?????
8号線 丹垈オゴリ タンデオゴリ  ?????
9号線 セッ江 セッカン ??

ちなみにまだ未開通だが、9号線には麻谷??という駅も将来開業予定。
できれば空港鉄道との連絡駅になる。

以上、漢字+ハングル固有語の駅名は、いくつかのパターンにわけられる。

1.○○アプ (~前)
2.○○サゴリ、サムゴリ、オゴリ(十字路、三叉路、五叉路)
3.○○ナル ○○ジェ  (船着場、峠?)
4.○○山 ○○江
5.ハングル固有地名+公園、遊園地など

1.の○○アプは、日本の駅名でもよく使われるパターン。
日本でも京都市地下鉄京都市役所前駅、大阪地下鉄動物園前駅などがある。
英語表記などではアプの部分が省略される。

2.サゴリ(十字路)、サムゴリ(三叉路)は、韓国のバス停ではおなじみで、地名としてよく使われる。また駅名では既存の駅名と区別するためにつけられるようである。
ミア駅 と ミアサムゴリ駅
シンデバン駅とシンデバンサムゴリ駅
クァンミョン駅とクァンミョンサゴリ駅
特にクァンミョンサゴリ駅はもともと光明駅だったが、KTX光明駅の開通にあわせて、クァンミョンサゴリに改称された。
ちなみにクァンミョン駅とクァンミョンサゴリはかなり離れている。
おそらく、クァンミョン駅には電鉄も通るようになり、同じ首都圏の料金体系に組み込まれているため、どちらかの駅名を変える必要が会ったものと思われる。

3、○○ナル、○○ジェは、韓国の固有地形名を生かしたパターン。
ちなみにクァンナルは駅名では漢字表記はないが、???(廣壯洞) にあることから???(廣壯洞) にあるナルという意味と思われる。

4は、3.とは逆に、地形名が漢字(山、江)のパターン。

韓国の役所駅名について

地下鉄1号線が乗り入れる国鉄京釜線のシフン(始興)駅が2008年12月、クムチョングチョン(衿川区庁)駅に改称された。
区庁など役所の名前がつく駅名は多くはない。
ソウルの地下鉄で役所の名前がつく駅名といえば

○1・2号線 市庁駅
○2号線支線 陽川区庁駅
○4号線(国鉄果川線) 政府果川庁舎駅
○5号線 永登浦区庁駅
○6号線 麻浦区庁駅
○7号線 江南区庁駅
○8号線 江東区庁駅

がある。
始興駅の設置は1908年。
当時の地名は始興郡郡内面(クンネミョン)郡内里(クンネリ)であった。
地名からするとここが郡の中心であったらしい。
ちなみに面は日本で言う市町村、里は字にあたる。
正確な位置関係はわからないが、当時の状況からみて、駅名は郡名である始興郡からとられたものと思われる。
地名は1914年に始興郡東面始興里と改称された。
これは始興郡の中心部であるからとも、始興駅があったことも影響しているとも考えられる。
1963年にソウル市に編入され永登浦区始興洞に、1980年には分区により九老区始興洞に、1995年にさらに分区により衿川区始興洞となった。
始興郡は1989年1月、始興市の誕生とともに廃止された。
現在の始興市は始興駅よりも西側にあり、駅がない。
洞名には残されているとはいえ、今回の改称で駅名に残されていた始興郡の名残りが消えてしまったことになる。
確かに駅前にはクムチョングチョン(衿川区庁)ができている。駅名としては間違いではない。
このクムチョンという名前は1795年、始興県(※県は当時の行政単位)に改称される前の名前、クムョン(金川)県からとられたという。
と考えれば、このたびのシフンらクムチョングチョンへの駅名の変更は、200年前の地名が駅名に復活したともいえる。
当時、区名を始興区にしなかったのは、すでにあった始興市に配慮したものと考えられる。

他に韓国の役所駅名は・・・

仁川地下鉄1号線 富平区庁駅  仁川市庁駅
大田地下鉄 中区庁駅
釜山地下鉄1号線 市庁駅
釜山地下鉄3号線 江西区庁駅

などがある。

ソウルにあるヨンドン

ヨンドン・セブランス病院が、このたびカンナム・セブランス病院に名称を変更した。

ヨンドン??とは、漢字で書くと永東となる。
もともとはソウル市の南部、漢江の南側をさす地名である。
ヨンドゥンポ(永登浦)の東という意味があったらしい。
しかし、区の名前としても使われていない。
最近ではヨンドンというよりもカンナムという方がずっと多く、通りもよい。
ヨンドンという名前が残っていないか、見てみると
ヨンドンホテル(シンサ駅近く)
ヨンドン大橋
ほか、会社の支社を見てみると
KT ヨンドン支社(ヨクサム)のほか
ウリ銀行 ヨンドン支店
振興相互貯蓄銀行 ヨンドン支店
新韓銀行 ヨンドン企業金融支店
ING生命 ヨンドン支店
オレンジ相互貯蓄銀行 ヨンドン支店
など、銀行系はまだあるようである。

このヨンドンを避けるようになった1つには、ほかに2つのヨンドンがあるからかもしれない。
1つは江原道(カンウォンド)の、テペク山脈の東側の地域をさすヨンドン。漢字では嶺東。ヨンドン高速道路はソウルからこの地域に向かう高速道路を指す。
もう1つは忠清北道にあるヨンドン郡。漢字では永同と書く。ヨンドン郡にはヨンドン大学もある。
でも貴重なソウルのヨンドンの「生き残り」であった病院名が変更されたのはショックだった。


ソウル地下鉄1号線の駅名

地下鉄1号線の駅名をためしに「英訳」してみる。
これは本来の駅の英語表記とは違う、漢字名からの「直訳」である。
ちなみに地下鉄1号線はソウル駅から先、清涼里から先は、それぞれ国鉄京釜線、京元線に乗り入れている。

ソウル駅 Seoul Station
市庁 City Hall
鐘閣 Bell tower
鍾路3街 Bell Street 3th Town
鍾路5街 Bell Street 5th Town
東大門 East Big Gate
東廟前 East shrine
新設洞 New establishment cave
祭基洞 Festival Base Cave
清涼里 Clean Cool Village

鍾路の「鍾」は酒器の意味があるらしい。
でも本来の意味は「鐘」がある「路」である。
字は日本の統治時代にあらためたらしい。
なので本来の意味で「英訳」してみた。

「洞(トン)」は韓国の都市における下部の行政単位の名前。
日本でいう「町」にあたる。
「○○街」の例外ががあるが、ほぼ「洞」で統一されている。

したがって日本風にいえば、「新設洞」は「新町」となる。
駅名は存在する地名「新設洞」に由来する。
祭基洞駅も同じ。
ちなみに日本統治時代、日本人がすむエリアは「町」という単位となった。
新設洞、祭基洞も1943年の東大門区設置の際に新設町、祭基町となったが、
1946年10月に町が洞に改められている。

「里」も、行政単位の名前。
郡部で使われ、日本で言う「村」にあたる。
本来であれば都市部にある清涼里も「清涼洞」になるところである。
清涼里も1943年の東大門区設置の際に町となっているが
その際、名前が「清涼町」ではなく「清涼里町」となった。

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